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商標


角瓶事件
「角瓶」は商標か?

平成13年(行ケ)第265号 審決取消請求事件
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/063/012063_hanrei.pdf

ビンの形を表現したに過ぎない「角瓶」という文字に商標の価値があるか?
こんな争いがありました。

商標の出願
洋酒の巨大メーカー、サントリー株式会社が、「角瓶」という商標を出願しました。
「角形ビン入りのウイスキー」を指定商品としてです。

しかしこれは単に「ビン形をそのまま表現しただけ」。

そんな用語を一企業に独占させたら、商品の形を独占させたようなもの。
普通なら拒絶されます。

使い続けて有名になった
サントリー社も、その点で登録を受けられない、という点は認めました。
しかし商標法には例外があります。
それは、使い続けた結果それが需要者の間で有名になった場合には、元来は商標と認められない用語でも特別に登録を認めよう、というものです。サントリーはその点を主張して登録を求めました。
では「有名」とは何か?どんな証拠が必要か?角瓶の争いを参考にしてください。

「角瓶」という単語を独占させても?
特許庁の審査、審判でも、さらに高裁の訴訟でも一貫して「角瓶」は例外として登録すべきではない、と判断しました。
その理由は次のようなものでした。
まず、サントリー社が過去の長年の広告に「角瓶」という文字を使ったことは認めました。
しかし、その広告の実態をみると常に「サントリー」というハウスマーク(社証)と一体となって、「サントリー角瓶」として使われています。
ということは、消費者は「サントリー」という文字を認識して商品を特定したのであって、その場合に「角瓶」という文字の存在価値はない、というのです。
さらに「角瓶」といった用語は、商品の流通過程においてみんなが使いたい表示であるはず。これを一企業に独占させることは妥当ではない、とも。

高裁の判断
高裁は両者の主張を比較して次のように判断しました。
  1. 角瓶の歴史
    過去のデータから、サントリー社はウイスキーの販売量が日本一であること、角型瓶入りのウイスキーは、昭和12年から販売を続けていることを認めました。サントリーの広告を見るとこうなっています。

    山崎峡で十数年、ウイスキーをつくり続けていた男が「これや!」と叫んだ。昭和12年、角瓶誕生。創始者、鳥井信治郎はこの傑作を通じてサントリーウイスキーの技術を確立。その結果、日本の「ウイスキーの父」と呼ばれています。

    下が、「これや!」と叫んだという鳥井信治郎氏です。平成26年のNHK連続テレビ小説「マッサン」で竹鶴政孝夫妻に影響を与えた人物として話題になっているようですね。
    竹鶴政孝は当時を振り返り「とにかくあの清酒保護の時代に、鳥井さんなしには民間人の力でウイスキーが育たなかったことだろうと思う。そしてまた鳥井さんなしには私のウイスキー人生も考えられないことはいうまでもない」と、感謝を表しています。(ウイスキーと私)
    この「角瓶」が、「ウイスキーの父」を生み出したのだから、裁判で戦う意気込みも違うというものです。

  2. 長年の販売、広告
    証拠を見ると、昭和28年にはすでに広告に「角瓶」という文字を使っており、広告は現在まで膨大な量になります。
    昭和25年から平成10年まで合計6646万ケース(12本入り)、最近の10年間では毎年300万ケースを「角瓶」として販売しています。
    さらに、昭和37年から現在まで長年にわたった「角瓶」のテレビコマーシャルを継続しているのです。

  3. 手がかりは社名か、角瓶か?
    広告の時期は長いのですが、その多くが「サントリー角瓶」というようにハウスマークと「角瓶」とを一体につないで使っていました。出願したのは「角瓶」の文字なのにです。

    この点裁判所は、消費者は、「角瓶」という部分を、たくさんあるサントリーの製品の中からの選択の手がかりとしていると判断しました。
    だから、「サントリー」という文字があったとしても、「角瓶」の文字が独立して、他の商品と区別するための標識として認識されている、ということです。

    こうしてビンの形を表現しているにしか過ぎない「角瓶」という文字が、長年の努力の結果として保護されたのでした。


登録商標
下が、争いの結果登録になったサントリーの商標です。

(190)【発行国】日本国特許庁(JP)
(450)【発行日】平成14年5月28日(2002.5.28)
【公報種別】商標公報
(111)【登録番号】商標登録第4561212号(T4561212)
(151)【登録日】平成14年4月19日(2002.4.19)
(540)【登録商標】

(500)【商品及び役務の区分の数】 1
(511)【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
第33類  ウイスキー
(210)【出願番号】商願平6-48572
(220)【出願日】平成6年5月17日(1994.5.17)
(732)【商標権者】
【氏名又は名称】サントリー株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区堂島浜2丁目1番40号

平成6年に出願して、登録まで8年かかっています。
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