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八丁堀伝説


発明者を怒らすな!」の巻

  1. 判断者はつらいよ。
    同僚、上司の前で「あなたの発明ダメね」と言われたら誰でもカチンときますよね。「技術もロクにわからないくせに!」と怒らせてしまうことも。
    弁理士がそんな判断する側に立たされたときどうするか。山口特許事務所のノウハウを公開しましょう。

  2. 工場から呼ばれて。

    大手のメーカーから電話です。「工場からたくさんの発明が上がってきました。どのようにまとめていいのかわかりません」。そんな状態だからなんの書面もできていないのです。
    翌朝会議室に入ると10人以上の社員が待っていました。1人が特許部員、他の方々は全員、発明者です。
    「ではこれから発明を説明してもらいます。全員で工場へ」、「エッ、工場へ行くの?」 製品が航空機の部材なので、工場も体育館なみの建物。その内部に数台の大きな機械が設置してあります。

  3. 分からない!
    その内の1台の装置の前に来ると一人の発明者の説明が始まります。この装置の特徴、従来の装置との違い・・・など。しかしたとえば昇降舵のような特殊な部材を作るための特殊な装置だから見るも聞くも初めて、どこに従来の問題があったのかもわかりません。
    しかし他の発明者がズラッと並んで待っているので時間もとれないし、あまり初歩的な質問もできない。メモのとりようがないのです。
    そうこうするうちに「では次の機械へ」とまた全員でぞろぞろ。
    一つの工場内で数台の装置の説明がおわると隣の体育館なみの工場へ。
    こうしてさっぱり理解できないうちに午前中の説明会が終わりました。

  4. さあどうする?

    「では発明の評価は午後からお願いします」と言われて食堂に案内されても食事ものどを通りません。
    発明がろくに理解できないのだから、評価のしようがないことが一つ、もうひとつは「あなたのは特許はムリね」と恥をかかせていいのだろうか。「技術がロクにわかってないのに」と反論されたらどう説得しよう、という問題でした。仲介した特許部員の顔にもドロを塗ってしまいます。

  5. ひらめいた!

    そのうちに閃きました。「そうだ、ご自分で判断してもらおう!」
    実際にはどうするか?午後の会議でこう切り出しました。
    「特許化のポイントは進歩性ですね。例をあげましょう。『単なる』か、そうでないかが決め手です。」といって説明をはじめました。まとめると次のような。

  6. 「単なる」寄せ集め

    ラジオと時計を箱に入れた発明。運搬が容易だとしても特許はムリ。

    「有意義な」寄せ集め

    ラジオの時報の信号で時計の秒針を修正できる発明。特許の可能性あり。

    「単なる」置き換え

    建物の壁を映写のスクリーンに置き換えた発明。特許はムリ。

    「有意義な」置き換え

    噴水の幕をスクリーンに置き換えた発明。 屋外で映画を楽しめる。特許の可能性あり。

    その他、転用の発明、用途変更の発明、数値限定の発明・・・

  7. ちょっとムリかな。
    理解していただいた様子を見てから会議をスタート。「さて、ご自分の発明をご自分で判断できますよね。ではAさんから」
    Aさん「今の話からすると私の発明は特許化はちょっとムリかなと」
    私「なぜですか?」
    Aさん「すでにこんな技術が知られていました。すると『単なる置き換え』に相当しそう
    です。」
    私「そうですね。次回はその部分を改良してみましょう。ではBさんは?」
    Bさん「今の話からすると私の発明は特許になるのではないかと。なぜならば・・・」

    私はなにも言っていないのです。みなさんが納得して自己評価をされ、4件だけを特許出願しようということになりました。

    こうして発明者の誰一人として怒らせず、仲介してくださった特許部員にも恥をかかせずに発明評価の会議が終わりました。今度はコーヒーをゆっくり味わったのでした。

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