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八丁堀伝説


契約しちゃっていいの?」の巻

  1. 特許権を買いたい。
    長年のお客様であるメーカーから電話がありました。
    「他社のバルブの特許を買い取りたいので書類をつくってほしい。特許番号は××号です。」と。
    その場合には特許権者から「譲渡証」をもらい、それを特許庁に届けることによって特許権の名義人が変更するのです。
    弊所では「分かりました」と回答して書類を作り始めました。

  2. チョッと待てよ?
    書類の正確を期すために、特許の「原簿」を取り寄せて確認します。
    普通は「原簿」だけを読んで確認すればよいのですが、念のために発明の内容を記載した「公報」を取り寄せて読んでみました。
    その公報の図面を見ると、確かにバルブの制御回路が描かれています。しかし図面は権利範囲ではありません。
    「特許請求の範囲」の記載だけが権利範囲です。
    そこで複雑な「特許請求の範囲」を読み解くと多くの限定がしてあってきわめて特殊な回路が権利になっているのです。
    広い範囲で特許が取れず、特殊な限定をしてやっと特許になったものでした。
    すると疑問がわきました。この特許はお客様の作っているバルブの制御をカバーするものではないのでは?と。

  3. それでいいんです。

    そこでお客様の技術部長に電話しました。
    この特許は特殊な回路に関するものですよ。御社の制御とは別の系統では?と。
    しかし図面の方を信じている部長はいいました。「それでいいんです」。もちろん、新製品への方向転換には新しい分野の技術の取り込みが必要でしょう。

    しかし今までのお付き合いから、どうも方向が違うような気がしました。
    そこで社長に確認の電話をしましたが、社長も同じ意見でした。

    弊所の方は言われた手続きを進めれば手数料をいただけるのだからそれで丸く収まります。しかし上記したような違和感があるので会社を訪問して直接検討しましょう、ということにしました。
    電話では限界があるからです。


  4. そうだったのか!
    会社を訪問して部長と社長に、権利範囲の解釈について項目に分けて順番に説明しました。
    はじめは「もういいのに、面倒な」と乗り気でない様子でしたが、途中で「ハテな?」と気が付かれたようです。
    そして、「そんな権利だったのか!それでは買っても意味がないじゃないか」と顔を見合わせています。

    会社は「特許請求の範囲」は複雑なのでほとんど読んでいなかった、それよりも図面を見て「これだ!」と早合点した先入観、それが電話での説明だけでは覆らなかったのですね。
    結局その譲受の契約は取りやめ。お客様は350万円ほどの無駄な買い物をせずに済んだのでした。
    で弊所の方は? 手続き料が入らず一銭にもならなかったのですが・・・

    山口特許事務所は依頼されたことをやるだけでなく、お客様の戦略や契約の対象物も考えながら進める義務も感じています。その際にお金にならなくとも。
    (ちょっとカッコ良すぎ?)

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